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人形作家 安部朱美 Blog ~ 風のささやき

人形作家 安部朱美のオフィシャルブログです。人形のこと、企画展のこと、そしてささやかな日々の出来事を気まぐれに綴っています。

Message

人形創りはいつの頃からか、自分の内面を探る作業ではないかと思うようになりました。 語り過ぎず、創り過ぎず、余白を作っておきたい。 観て下さる方、それぞれの想いを重ねてもらって人形が完成すると思うから。
           安部朱美

鑑真和上像

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3年も前にご依頼をいただいた「鑑真和上像」を、
山形県 酒田市の 光傳寺さんにようやく送りました。
加納美術館で2回目の人形特別展を企画して下さった時に出した
座禅」人形をご覧いただいて、鑑真和上像をお願いしたい」という、
ご丁寧な8枚ものお手紙をいただいたのです。

「私などがとても・・・」とお断りするつもりで
お電話で話している折に、作業机の前に、
私が何気なく留めていた写真が、鑑真像だったんだと気付き、
しかも、数枚重ねていた仏像の一番上に・・・
これも、何かのご縁だろうと、お受けすることになった。

そもそも、人形を創るようになってから40年になるが、
不思議なご縁が沢山あり、それが次のご縁に繋がって、
未知のことを学ばせてもらい道も開けてきたと感じていました。

「座禅」人形も、まさに不思議なご縁が歯車のごとく噛み合って 
創ることになり、鎌倉の臨済宗大本山円覚寺に奉納させて頂いたんだけど、
円覚寺管長 横田南嶺老師が、加納莞蕾とキリノ大統領の平和思想に
感銘を受けられて、お借りすることになったのです。

改めて 忘れていた歴史を紐解き、
鑑真和上の来歴を調べたりしながら創っていくうちに、
乱れた日本の仏教界を正すためとはいえ、
失明しながらも6度目の挑戦で日本に来られた。
その精神性の深さ、強さと共に温かい慈悲と豊かな包容力、信念・・
そういったものが、唐招提寺の和上像には確かに表現されていると、
写真を何枚も見ているうちに思った。

見ているようで、それまで見えなかったものが徐々に見えてきて、
眉間、まぶた、頬、口元、あご等の微妙な違い、
写真を撮られた時の照明でも少しずつ違って見える、
やり直し、削っては付けての繰り返しでした。

鑑真が、袈裟の作り方を日本に伝えたということで、
唐招提寺の和上像も袈裟を纏っていらっしゃるのだそうです。

光傳寺さんは「お袈裟縫製の会」を続けておられ、
5年かけて地元のご婦人に手伝っていただき、
完成した袈裟を身につけて仏事をお勤めされてるとのことで、
写真も同封されていて、和上像に、
そのお手製の袈裟を纏わせてほしいとのことでした。

1300年位も前のことで、材質の違いからか、
しわの出方が随分と違う、纏い方も違う。
その融合性を見つけようと苦労し、
鑑真和上は座禅を組みながら遷化されたそうで、
親指が倒れたように見えるのは亡くなられた後だから?・・・

手は今の組み方にしました。(光傳寺さんとご相談して )
そして 経年劣化の表現はしなくても良いとのことでした。

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写真メールで「感激です、一緒に座禅させて頂きます。」と喜んで頂きましたが、
私などが鑑真和上像を創らせて頂くとは、
自分の能力を遙かに超える畏れ多いことだったと思い知りました。
でも、鑑真という高僧の精神に少しでも
触れることができたような気がしたのは幸せなことでした。

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新発想の妖精シリーズ

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5月26日から31日まで、JU米子高島屋で『山陰の匠展』がありました。

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私は、匠ではないのだけど とは言ったものの出すからには今までとは違ったものを作ってみようと、
ちょうど戴いてた着物などがあって、その着物地や樹皮等の素材からのインスピレーションで
着想した新発想の妖精シリーズにしました。

2~3ヶできたら・・・取りかかってみると、お風呂に入ってゆったりとしている時に、
いろいろひらめくのだけど、湯船につかりフタを首元まで持ってきていても、次々に涌いてきて、
お湯がすっかり冷めてしまって、上がれなくなることも度々ありました。
道行きコート地が茸にピッタリで「森の精」に。

黒留め袖の裾に波模様があり、それをバックに「海の精(人魚)」「夢の精」「沢の精」
「花の精」「風の精」「夜の精」、絣から「藍の精」ができました。
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そして始まってからも、こういった発想の妖精シリーズは、もう見て頂く機会は無いかもしれないと、
作りかけてはいたけど間に合わなくて諦めていた、
帯地等で作った小作品「ほほ笑みの精」「眠りの精」を、ほとんど徹夜で仕上げて持って行きました。

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何をこんなに拘わっているんだろう 私はバカみたいと フラフラしながら・・・
ホントに 疲れ果てたけど、まだできそう・・・・・