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人形作家 安部朱美 Blog ~ 風のささやき

人形作家 安部朱美のオフィシャルブログです。人形のこと、企画展のこと、そしてささやかな日々の出来事を気まぐれに綴っています。

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人形創りはいつの頃からか、自分の内面を探る作業ではないかと思うようになりました。 語り過ぎず、創り過ぎず、余白を作っておきたい。 観て下さる方、それぞれの想いを重ねてもらって人形が完成すると思うから。
           安部朱美

人形「千人針」が完成

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昭和館から依頼された「千人針」が、ようやくできました。
昭和館は、戦中戦後の国民生活上の労苦を後世代に伝えることが目的の、
国立(厚労省所管)の施設で平成29年制作の「青空教室」が常設されています。

「千人針」は、出征する夫や息子の無事を願って、妻や母親らが街頭に立ち、
千人針を縫ってもらっている光景です。

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昭和館から資料をたくさんメール送付して頂き、そこからイメージを膨らませて作りました。
日中戦争が始まった昭和12年~13年頃を時代背景に作ったんだけど、
衣装にも随分迷いました。
資料では洋装や着物姿のおしゃれな感じの絵や写真が多く、
戦時中だったら絣などのモンペ姿を思い浮かべるんだけど・・・。

資料を読み込んで分かったこと。
日中戦争が始まったばかりの頃は、多様なファッションを謳歌していた当時の女性にとって、
主に都会ではモンペは古臭くダサかったそうです。
戦時下の女性にふさわしかったのは、国防婦人会に象徴される、
和服に白いエプロン姿が社会の最前線に立ち、
一方で銀座では流行のファッションに身を包んだ女性たちが闊歩していたんだそうです。

防空演習などにも便利な戦時下にふさわしい「服装改善」委員会が設置され(市川房江さんも参加)
モンペの持つ機能性が再評価されたが、戦争景気による豊かさもあり、
女性の国民服としてのモンペはなかなか普及しなかったという。

画家の藤田嗣治もモンペを推奨し戦争が激しくなるにつれ、勤労奉仕、
女子挺身隊などの労働も過酷になっていった。
ファッションから見ても戦争が男女間、上流階層、下流階層の女性のあいだの
平準化を確実に進め、格差の是正につながったという。

なるほど! そういうことだったのかと納得・・・。

でも、着物、帯、帯揚げ,帯紐など、どの色柄、材質をチョイスするかで迷い、やり直し。
髪も始めは粘土で随分、時間をかけたけど木綿糸で又、やり直し・・・。
ほぼ95%完成直近と思いながら、気になり大手術をしてやり直す。

いつもそうだけど、時間の経過でやっとみえてくるものがある・・・。

今のコロナウィルスとは関係なく、制作中はずっと巣ごもり、引きこもり状態で
「鶴の恩返しのおつう」を重ね合わせて感じることがある。
そして、対象になりきって制作しているから、ちょっと街に出た時等には
浦島太郎になったような気になることもあります・・・(笑)

さて、次は「靴磨きの少年」です。

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